不織布は文字通り繊維を織らないでつくられた布のことをいいます。具体的な製造工程では、繊維を熱で圧着させたり、高圧で吹き付けて繊維を絡ませたりと、用途に応じてさまざまな方法が採用されていますが、いずれも繊維を織らないでシート状にしたものという点では共通しています。このような不織布には従来の方法で織り上げた布とはまた違った長所があることから、現在では生活の身近なところまで浸透するようになりました。
たとえば不織布はしっかりと織り上げた布とは違い、適度に繊維のすき間をつくることが可能なため、通気性や吸水性に富むといった長所をもっています。このような長所を生かした製品にはマスクや紙おむつがあり、空気や水を通しながらも、チリやホコリは内側に寄せ付けないといった効果を発揮します。
また不織布は従来の布と比較すると耐久性にすぐれているという長所もあります。布製のバッグではしばしば重い荷物を入れると破れてしまい、使い物にならないことがありますが、不織布の場合は製造の過程で繊維の密度や厚みをコントロールできるため、少し力を加えたくらいでは破れることがありません。そのため重い荷物を入れる買い物バッグなどによく使われますが、薄くて軽いという見た目の特徴に反して丈夫で長持ちすることはよく知られているとおりです。
ほかにも原料となる繊維にはさまざまな素材が利用できることも長所として挙げられます。布といえば木綿やシルクと相場が決まっていますが、不織布の場合はこのような制約はありません。たとえば紙と同様のパルプ繊維でおしぼりをつくったり、樹脂をシート状に加工してビルなどの建物の空調用のフィルターをつくったりすることができます。用途や形状はまったく違いますが、実はどちらも不織布のなかまです。